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Houses

NOTCHED WALL HOUSE

2008Complete

CAn宇野享

閉じて開く新しい関係性
建築とは、さまざまな物事の関係性を創造することだという立場に立つと、周辺環境に対して閉じた建築や敷地には違和感がある。一方で、砂漠のような乾いた場所に人に媚びない建築が屹立する風景への憧れがある。
この建築は岐阜県瑞穂市に建つ住宅である。約l,OOOm切敷地を塀で囲み、安心して生活できることと、生活動線をコンパクトな住宅にしたいというのが、建主の要望であった。素直に解釈すると、周辺環境に閉鎖的になり、広い敷地の利点である距離や余白を生かした建築にはなりにくい。要望を満たした、周辺環境に閉じて開く新しい関係性をつくり出すことが重要なテーマとなった。

ギザギザの壁―45度の回転グリッド
以前から、街の敷地分割と建築の空間分割のズレという単純な法則が、その場独自の磁場を生み出すのではないかと考えていた。そこで、南北軸を45度回転させたグリッドで空間を分割して、約14m角の外枠で断ち落とす。結果として残るギザギザに折れ曲がった外壁によりズレを視覚化し、周囲の意識を引き寄せる。その擁壁による内外の連続性の希薄さが、周辺環境と45度ずれた内部空間独自の秩序を強調する。まるで周辺環境から切り離されたような、安心感を住み手にもたらす効果を期待した。内部空間は、土間のような中央の空間に面した性格の異なる3つの光庭により、空間分割と採光、通風を満たす。視覚的な一体感がある回遊性の高い平屋のワンルームである。

抽象的な余白の風景
広い敷地を生かして余白をデザインする。閉じた建築と開いた前庭は、内外が独立した世界を構築する。視覚的に住宅との関係性が切れた前庭は、簡単なスポツや大人数のイベントが気兼ねなくできる自由なフィールドとなる。また、敷地前面に置かれたディスプレイスペースのある白のコンテナと、鋼製折板のルーフの組み合わせが、倉庫と駐車場という機能を抽象化して、敷地全体の生活感や場所性を消失させる。
訪れた人びとが、記憶の断片を掘り起こしてイメージを重ね合わせるような、建築と大地/空の対比から生まれる抽象的な余白の風景をつくり出せたのではないだろうか。
所在地 岐阜県瑞穂市
用途 専用住宅
構造 RC造+木造
規模 地上1階
敷地面積
建築面積
延床面積
996.61㎡
179.29㎡+コンテナ59.45㎡
179.29㎡+コンテナ59.45㎡

PUBLICATION

住宅特集 2010年7月号
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