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Houses

ヒムロハウス

2002Complete

C+A小嶋一浩

大阪と京都と奈良からほぼ等距離の、穏やかな山間部がこの30年の間に虫食い状に開発されてきた地域に建つ住宅である。この敷地はもともと地域にある伝統的な農家の集落のエッジであり、築70年を超える伝統的な木造家屋が建っていたが、老朽化したため建て替えることになった。
当面の住み手は子供たちが巣立った初老の夫婦である。彼らだけのためなら、このような大きな空間は必要ない。しかし、少子高齢化社会がすごいスピードで進行する日本で、当面の住み手だけを考えて住宅のプランを描いても早晩住み手は消失してしまう。現在の日本社会が世界に「先駆けて」人口の減少に直面している中で、血縁家族に限定しないで人に住み継がれていくような空間を考えたときに、この30m(2nd stageを加えると50m)の細長い住宅が生まれた。

細長いプランはその内部がさらに長手方向に2分割されている。その一方が一室の「白」のスペース、もう一方が小さい空間が連なった「黒」のスペースである。ここで、「黒」と「白」は以下のように定義される。

「黒」のスペース=使われ方と空間が1対1対応する場所。機能に即した呼び名が部屋名となる。
「白」のスペース=使われ方によってその場所の呼び方が変わっていく場所

通常の建築は、住宅に限らずともたいがいは「部屋名」のついた目的的な空間(=「黒」)とそれをつなぐ動線(これも単一目的の空間だから「黒」)でできている。だから全体が「まっ黒」である。こうした建築は一見合理的なように見えて、とても窮屈であり、不合理でもある。目的的な空間はその性能が向上するほどそれ以外の使い方にそぐわなくなるし、そうすると今度はその目的にあったときしか使われないから利用頻度がさがることになる。また目的(機能)が変わったときには使用が放棄されるか改修を余儀なくされるからだ。
日本の住宅の場合、一般にすごくちいさな家の場合でも家族の人数分の個室がまず過不足なく確保される。結果としてリビングダイニングと呼ばれる本来いろいろなことがおこるであろう場所は、小さく一度家具や家電を置いてしまうと例えば食卓=食事、TV=TVを見るといった1対1対応の行為で埋め尽くされて身動きできなくなってしまう。「それ以外の何か」などおこりようがない。見事に「まっ黒」な建築である。
この住宅では、何人が住むかが実は定義されていない。当面の「白」のスペースはこの夫婦の生活の中でのことさらに多い来客のための空間となるだろう。個々の「黒」のスペースは、何十年かの間に蓄えられてきた「捨てることのできない事物」と仕事や絵を描くといった行為に対応している。しかしある時間が経過するうちに、「やはり一人になって老後を送っている妻の姉妹」「嫁いだ娘の家族と嫁ぎ先の老親」といった従来の血縁家族からは拡張した住み手が登場する可能性を想定している。「夫婦+子供」のいわゆる「核家族」と称される生活のしかたの不自由さから逃れるには、今のような「まっ黒」の空間ではなく、いろいろなアクティビティが発生し得る「白」のスペースが、全体の半分くらいは必要なのだと考えた。この「白」はそういった「可能性の場所」である。
一方「黒」はアプローチとなる川側に一列に配置され、いくつかの入口を持つ。これはお互いに監視しあう関係にならないで出入りできるように考えたからである。また「黒」の空間だけを通って端から端まで移動できる裏動線が確保されており、「白」と合わせると1周60mのループを循環できるようになっている。

建築全体が東側で一度折れ曲がっている。空間が折れ曲がることで、実際以上の距離感が生まれる。空間の中に見えそうで見えない部分があることで人はその方向に引っ張られる。あるいは視点の微妙な移動で空間の現れ方が大きく揺らぐ効果もある。折れ曲がりが人の動きやアクティビティを喚起している。

DATA

所在地 大阪府枚方市
用途 個人住宅
構造 木造一部RC造
規模 地上2階
敷地面積
建築面積
延床面積
2028.92㎡
187.86㎡
192.35㎡

PHOTO

写真 平井広之

PUBLICATION

GA HOUSES
住宅建築
新建築住宅特集
建築文化
pen
日経アーキテクチュア
CONFORT
JA
GA JAPAN
73
335/351
2003年2月号
665
2004年1月号
2004年5月17日号
2004年5月号
52 WINTER,2004
79

AWARD

2004年木質建築空間デザインコンテスト 優秀賞
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