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Kindergarten

市が洞保育園・市が洞児童館

2014Complete

CAn伊藤恭行

共存の計画学
この施設は、保育園と児童館が複合したものである。この二つは共に子供の施設でありながら異なる性格を持っている。保育園は0歳児から5歳児までの乳幼児を終日ケアする場であり、幼児が勝手に外へ出てしまうことや、外部からの侵入を防ぐための厳密なセキュリティコントロールが求められる。児童館の方は乳幼児から高校生までの児童・生徒が利用する施設であり、比較的自由に出入りができる。このように異なる役割を担う施設を共存させて作ることは、これからの公共施設において大きな一つの流れになっていくのではないかと思われる。
敷地は郊外の住宅地の中にあり、南は小学校の緑地に面し、他の3面は戸建て住宅とマンションに囲まれている。必要とされる床面積(約2000㎡)に対し敷地面積は2,000㎡であり、保育園の園庭を確保することを考慮すると、この種の施設としては非常にタイトな条件である。
ここでは、タイトな敷地条件の中に二つの施設と13台の駐車場を配置するため、幼児を対象とした施設としては異例の3層構成となっている。まず、半地下の1層目には駐車場と厨房施設を、2層目には南側の園庭に面して保育園、北側に児童館を配置している。二つの施設の間の中央に保育園と児童館共用の事務室を置き、東側のエントランスからアクセスを左右に分けることでセキュリティレベルの異なる二つの施設が共存可能な計画としている。3層目は保育園の占有空間であり、中央の外部空間は夏季にはプールが設置されるテラスとなっている。
0歳児から5歳児までを終日にわたってケアする保育園では子供の発育段階に応じて各々の保育室が独立している必要があり、この点は幼稚園(3歳児以上、1日4時間以内)とは建築計画的に大きく異なる。必然的に個々の保育室は壁で囲まれた独立性の高い空間となるが、ここでは大人の目線レベルをガラス面として透明度を高めることで、保育士達の目が離れた空間まで届くように配慮している。
また、3層に積層した建築ではあるが可能な限り接地性を高めるため、園庭から階段、2階のテラスまでが立体的に繋がる屋外空間となるよう計画した。保育室だけではなく園内の様々な場所が子供たちの居場所となることを企図したものである。断面的には、保育園の遊戯室(2階)と児童館のプレイルーム(1階)が異なるレベルにあって独立性を確保しながら、互いのアクティビティが感じられる開口部によって視覚的に繋がれている。
保育園と児童館に挟まれた中庭は、二つの異なる施設を隔てる役割を果たすとともに、双方の施設から利用可能な屋外空間ともなっている。このような両義的なスペースは多様なアクティビティを誘発する可能性を持っているが、同時に厳密にセキュリティを確保するという視点からは曖昧さを残した部分ともなる。このようなスペースの存在を許容するのか否か、許容されるとするならばそれをどのように使いこなしていくのかについては、これからの社会的コンセンサスによって大きく変わっていくことになるだろう。

DATA

所在地 愛知県長久手市
用途 保育所
構造 S造、RC造一部SRC造
規模 地上2階 地下1階
敷地面積
建築面積
延床面積
2,000.91㎡
922.38㎡
1,935.03㎡

PUBLICATION

近代建築2014.6
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